【期中手続】

 
 1.取引の仕訳

   @仕訳のルール

    簿記の目的は、企業における損益(利益)を計算することです。
    損益を計算することは、一定期間の取引の結果を示すことです。
    簿記では、この一定期間を一年間と定めており、これを会計期間といいます。
    なお、会計期間の最初の日を『期首』、最後の日を『期末』といいます。

    ここで『一定期間の取引の結果を示す』と書きましたが、企業における取引の全量は
    非常に多いため、全てを文章で記録していては、損益計算が大変手間のかかるものに
    なります。

    そこで、簿記は『簿記語』と言われる簿記専用の言葉で取引を『単純化して記録』し
    ます。
    これを『仕訳』といいます。

    『仕訳』にはいくつかルールがありますが、マスターすべきルールはたったの2つ。
    この2つさえ的確に押さえれば、仕訳はできます。

    では、2つのルールについて学習していきましょう。

   ☆ルール 1☆
    〜左が借方、右が貸方〜


    例えば、商品を100万円で仕入れるような取引の場合、仕訳は以下の表の通りになり
    ます。
    ここで、(借)とは借方のこと、(貸)とは貸方のことを指します。
    仕訳は(借)と(貸)の左右の項目で構成されますが、(借)が必ず左側になります。
    『かりかた』の"り"と『ひだり』の"り"で、借方=左と覚えましょう。


 <取引例>
   商品\1,000,000を仕入れて、現金で代金を支払った。

 <仕訳>
  (借)仕入 1,000,000 (貸)現金 1,000,000

   ☆ルール 2☆
    〜仕訳は現金の増減から考える〜


    仕訳において、どの項目を借方に(または貸方に)記載するのかは、難しい問題です。
    但し、これにもルールがあります。

    それは、現金の増減から考えるということ。
    そして『現金が増えたら借方に、現金が減ったら貸方に』記載することです。
    つまり『現金が増えたら左側に、現金が減ったら右側に』記載するのです。
    イメージとしては、『左手で現金を受け取り、右手で現金を払う』というように、体
    で記憶できれば完璧ですね。

    逆に、現金が増える"要因"となる『収入の発生』は貸方に、現金が減る"要因"となる
    『費用の発生』は借方に記載することになります。
    これは、現金の増減を先に仕訳してしまい、それに対応する項目(相手勘定と呼ぶ)
    をその逆側に入れることを意味しています。
    このように仕訳をすることで、『どういう理由で』『どの資産が』『どう増減した』
    ということを記号的に把握することができるのです。


 <取引例>
   社員への給料\500,000を、現金で支払った。

 <仕訳>
  (借)給与 500,000 (貸)現金 500,000
                ↑
               『現金』の増減を先に書き込む!

   A取引の基本

    さて、仕訳のルールを覚えたところで、次は仕訳をする対象となる取引を見て行きま
    しょう。

    仕訳の対象となる取引の数は星の数ほどありますが、ここでは、基本的なものでよく
    使われる取引を3つだけ押さえておきましょう。

   ☆基本の取引 1☆
    〜当座預金〜


    当座預金とは何か、知っていますか?
    当座預金とは、『小切手を振り出すことができる預金』です。

    小切手とは、銀行に持っていけばいつでも現金に換金してくれるもので、通貨代用証
    券と呼ばれています。

    企業間の取引の場合、品物の代金として現金を手渡したり振り込んだりするのは手間
    やリスクが伴うため、当座預金から小切手を振り出す(相手に渡す)ことで決済する
    ことが広く行われているのです。

    ちなみに当座預金には、普通預金などと違い、利息が付きません。



 <取引例>
   商品\1,000,000を仕入れ、小切手で代金を支払った。

 <仕訳>
  (借)仕入 1,000,000 (貸)当座預金 1,000,000
               ↑
              現金相当である当座預金の減少=貸方

 


 <取引例>
   商品\1,000,000を販売し、小切手で代金を受け取った。

 <仕訳>
  (借)現金 1,000,000 (貸)売上 1,000,000
   ↑
   現金相当である小切手の増加=借方
   小切手を受け取った時は、『現金』として処理する

 

   ☆基本の取引 2☆
    〜掛取引〜


    掛取引とは、仕入や売上の代金を、商品を取引した時点より後に支払・回収すること
    です。
    例えば、商品を入手したものの支払期限をその翌月末にする、というようなことで、
    いわゆるツケも掛取引の一部です。

    売上に対する代金を掛とした場合はその未回収部分を『売掛金』a/c、仕入に対する
    代金を掛とした場合はその未払い部分を『買掛金』a/cとして処理します。
    『売掛金』は将来的に現金の増加となるので、借方に記載します
    『買掛金』は将来的に現金の減少となるので、貸方に記載します。

    ※a/cとは、account code、つまり勘定科目のことです。


 <取引例>
   商品\1,000,000を仕入れ、代金は掛とした。

 <仕訳>
  (借)仕入 1,000,000 (貸)買掛金 1,000,000
               ↑
              将来的な現金の減少=貸方

 


 <取引例>
   商品\1,000,000を販売し、代金は掛とした。

 <仕訳>
  (借)売掛金 1,000,000 (貸)売上 1,000,000
   ↑
   将来的な現金の増加=借方

 

   ☆基本の取引 3☆
    〜手形取引〜


    手形とは、『いつ誰にいくら支払います』ということを約束した証券で、約束手形と
    呼ばれます。
    ☆基本の取引 2☆の掛取引に比べ、証券によって担保されている分、証拠力が高くな
    ります。

    会計上は、手形を受け取ったら『受取手形』a/cとして、手形を振り出したら(渡し
    たら)『支払手形』a/cとして処理します。



 <取引例>
   商品\1,000,000を仕入れ、約束手形で代金を支払った。

 <仕訳>
  (借)仕入 1,000,000 (貸)支払手形 1,000,000
               ↑
              将来的な現金の減少=貸方

 


 <取引例>
   商品\1,000,000を販売し、約束手形で代金を受け取った。

 <仕訳>
  (借)受取手形 1,000,000 (貸)売上 1,000,000
   ↑
   将来的な現金の増加=借方

 

   B取引の流れ

    仕訳のルールと基本的な取引を押さえたところで、次は具体的な取引の流れを身につ
    けましょう。

    ここでも、覚えるのは必要最低限の4つの取引の流れです。

   ☆取引の流れ 1☆
    〜現金〜


    企業取引において、現金に絡む処理は多岐に渡りますが、実際問題、帳簿残高と実際
    の残高が合わないことがよく起こります。
    そのため、企業は定期的に実査(実際に現金の残高を数えること)を行います。
    その際、帳簿残高と実際残高が合わない場合には、次のような処理をして補正します。
    (どの場合にも、実際残高に帳簿残高を合わせます)

    ◇帳簿残高<実際残高

     実際残高の方が帳簿残高より多い場合です。
     差額の原因が分かるまでは、『現金過不足』a/cで処理します。


 <取引例>
   実際残高が帳簿残高より\1,000,000多いので、補正する。

 <仕訳>
  (借)現金 1,000,000 (貸)現金過不足 1,000,000
 

    ◇帳簿残高>実際残高

     実際残高の方が帳簿残高より少ない場合です。
     これも、差額の原因が分かるまでは、『現金過不足』a/cで処理します。


 <取引例>
   実際残高が帳簿残高より\1,000,000少ないので、補正する。

 <仕訳>
  (借)現金過不足 1,000,000 (貸)現金 1,000,000
 

    但し『現金過不足』a/cは、原因が分かるまでの仮の姿(仮勘定)であり、原因が分
    かった時点で正しい勘定科目に振り返る必要があります。


 <取引例>
   実際残高が少ない理由が、\1,000,000の交通費の記入漏れだった。

 <仕訳>
  (借)交通費 1,000,000 (貸)現金過不足 1,000,000
 

    その他の現金関連取引として『小口現金』a/cがあります。

    企業活動において、小額現金が必要になることが多々あるため、一定額の現金を手元
    においておくことがあります。
    原則、『小口現金』a/cは現金と同等なので、『現金』a/cと同様の書き方をします。

    但し小口現金は『インプレストシステム(定額資金前渡制)』を採用することに注意
    しましょう。
    『インプレストシステム』とは、決められた期間で使った小口現金を、次の期間の初
    めに担当者が補充するというシステムです。

   ☆取引の流れ 2☆
    〜商品〜


    商品の取引を記録する際、売上原価を算定することを意識しておく必要があります。
    なぜなら、企業活動の損益は、収益−費用で求められますが、この『費用』の算出は
    売上原価なくしては算出できないからです。
    売上原価には、会計期間において販売した商品の原価はもちろんのこと、期末に棚卸
    残高として残っている原価も含まれます。
    この、棚卸残高の算出には、各商品の原価(単価)が必要になるのです。

    商品の原価(単価)の求め方には、以下の2種類があります。

    ◇先入先出法

     先に仕入れたものから先に出していく、というやり方です。

仕入

売上

10月 5日 @\ 50×10個

10月15日 @\ 50×10個

10月10日 @\100×10個

10月15日 @\100×10個

10月15日 @\150×10個

商品残高

        →商品残高は、@\150×10個=\1,500

    ◇移動平均法

     商品を仕入れる度に平均単価を計算する、というやり方です。

仕入

売上

10月 5日 @\ 50×10個

10月15日 @\100×10個

10月10日 @\100×10個

10月15日 @\100×10個

10月15日 @\150×10個

商品残高

        →平均単価は、(\ 50×10個+\100×10個+\150×10個)÷30個=@\100
        →商品残高は、@\100×10個=\1,000

    その他の商品関連取引には『発送費』『引取運賃』『値引』『戻し』などがあります。

    『発送費』
      商品の発送に関する費用です。
      売主負担の場合は『発送費』a/cで、買主負担の場合は『立替金』a/cでいったん
      処理し、後に買主に請求する処理を行います。

    『引取運賃』
      商品の引取に関する費用です。
      主に仕入の時に発生する費用ですが、これは『仕入諸掛り』として、仕入金額に
      含めて処理します。

    『値引』
      これは、販売時のディスカウントではなく、いったん販売した商品の代金を減額
      することです。
      主に、納品した商品の品質不良などが理由となります。
      買主として仕入れた商品の値引を受ける場合も、売主として販売した商品の値引
      をする場合も、仕入れた(販売した)時と逆の仕訳を起こします。

    『戻し』
      仕入れた商品を返品する場合や、販売した商品が返品された場合の処理です。
      これも『値引』と同様、仕入れた(販売した)時と逆の仕訳を起こします。

   ☆取引の流れ 3☆
    〜手形取引〜


    手形については、上段で学習した約束手形の他に『為替手形』というものがあります。
    約束手形が、企業Aと企業Bの間の二者間の取引に使われるのに対し、為替手形は三者
    間の取引に使われます。

    例えば、企業Aが企業Bに買掛金(債務)を\10,000持っており、企業Cには売掛金(債
    権)を\10,000持っている場合、AはBに\10,000支払って、さらにCから\10,000を回収
    することになります。
    ここで、Aが「当社がBに支払う\10,000は、Cが払います」という為替手形を振り出す
    ことで、当初の債権債務の内容を変えることなく、スムーズに債権債務の関係を整理
    することができます。
    もちろん、Aがこの手形を振り出すにあたっては、Cの承認が必要になります。

    この時、為替手形を振り出すAを『振出人』、支払を承認(引受)するCを『引受人』
    、手形を受け取るBを『受取人』と呼びます。
    なお、『引受人』は『名宛人』、『受取人』は『指図人』と呼ぶことがあります。

    為替手形の仕訳は、三者三様です。

    ◇振出人Aの仕訳

     振出人の仕訳は、Bへの債務とCへの債権の相殺処理になります。


 <取引例>
   CがBに支払を行う為替手形を振り出す。

 <仕訳>
  (借)買掛金 10,000 (貸)売掛金 10,000
 

    ◇受取人Bの仕訳

     受取人の仕訳は、約束手形の受取と同様になります。


 <取引例>
   CがBに支払を行う為替手形を受け取る。

 <仕訳>
  (借)受取手形 10,000 (貸)売掛金 10,000
 

    ◇引受人Cの仕訳

     引受人の仕訳は、約束手形の支払と同様になります。


 <取引例>
   CがBに支払を行う為替手形を引き受ける。

 <仕訳>
  (借)買掛金 10,000 (貸)支払手形 10,000
 

    なお為替手形には、他人に自由に譲渡(売却)できるという特性があります。
    この特性を生かして、期日より前に手形を現金化する方法があります。
    これを、割引・裏書といいます。

    割引とは、期日より前に手形を銀行に譲渡(売却)し、現金を手に入れることです。
    割引にあたっては、割引した日から期日までの利息として、割引料が差し引かれます。
    これは、『手形売却損』a/cとして処理します。

    裏書とは、第三者への買掛金(債務)の支払として、第三者に手形を譲渡(売却)す
    ることです。

   ☆取引の流れ 4☆
    〜その他の取引〜


    その他の取引として、有価証券取引、固定資産取引、などがあります。
    以下、勘定科目の説明を中心に見ていきましょう。

    『売買目的有価証券』a/c
      株式や国債などを売買目的で取得した場合、この勘定科目を使います。
      なお『売買目的有価証券』の売却にあたっては、取得原価との差額を『有価証券
      売却益』a/cや『有価証券売却損』a/cとして処理する必要があります。

    『建物』a/c、『車両』a/c、『備品』a/c、『土地』a/c
      一年以上使用することを目的として購入した資産(固定資産)の仕訳には、これ
      らの勘定科目を使用します。

    『前払金』a/c、『前受金』a/c、
      手付金の支払、手付金の受取に使用する勘定科目です。

    『未収金』a/c、『未払金』a/c
      売掛金(売上取引のみ)、買掛金(仕入取引のみ)以外で生じた代金未回収及び
      代金未払いに使用する勘定科目です。

    『貸付金』a/c、『借入金』a/c、
      金銭の貸し付け、借り入れに使用する勘定科目です。